なぜヨーガとフィットネスは混同されるのか?

なぜヨーガはフィットネスと混同されるのか?

※前回ブログの続きです。

現代では、多くの人がヨーガをフィットネス(運動やストレッチ)と誤解しています。その理由を探ってみたいと思います。

 

1. 近代ヨーガの発展と「身体重視」の流れ

ヨーガがフィットネスと混同される要因は、近代ヨーガの発展にあります。

近代ヨーガの歴史

・ヨーガの本来の姿は瞑想(デャーナ)と自己探求を中心とした知識の探求と修練でした。しかし、19〜20世紀に「ハタ・ヨーガ」が西洋化される過程で、身体的な側面が強調されるようになりました。
※現代、ヨーガとされるアーサナの実践は、ボディビルやオリンピック、そして西洋の軍隊の影響を受け確立されました。この辺りの歴史は、後日記事にしたいと思います。

特に、クリシュナマチャリアは、インドの伝統的なヨーガや格闘技と西洋の体操を融合させ、「ダイナミックな現代ヨーガ」を生み出しました。

これが後にアイアンガー・ヨーガ、アシュターンガ・ヨーガなどの流派となり、フィットネスとしてのヨーガが広まるきっかけとなったのです。

 

2. メディアやビジネスによる誤解の拡大

現代では、ヨーガは「健康的で美しい体を作るもの」として宣伝されることが多いです。

メディアの影響

•雑誌やSNSでは、「引き締まった体」「柔軟性」「ダイエット」「アーサナの美しさや実践方法」 といったテーマでヨーガが取り上げられる。

•モデルやインフルエンサーが、ヨーガを「美しい体を手に入れる手段」として発信する。

○ビジネスとしてのヨーガ

•「痩せるためのヨーガ」「デトックスヨーガ」などのマーケティングが、ヨーガをフィットネス化させている。

•ジムでは、「ヨーガ=エクササイズの一種」として提供されることが多い。

•ヨーガの教えや瞑想を教えると、「難しそう」と思われたり、宗教だと思われたいと、集客がしにくいため、運動にフォーカスしたクラスが増えてしまう。

「ヨーガはビジネスとして広まる過程で、よりシンプルに運動として提供されるようになった。」

 

 

3. 指導者の知識不足

ヨーガを教える指導者の中にも、「ヨーガ=フィットネス」と考えている人が少なくありません。その理由は以下のようなものです。

指導者自身がフィットネスとして学んでいる

•ヨーガ指導者養成コースの多くは、短期間で終了するため、「知識・瞑想・呼吸法」よりも「アーサナ(ポーズ)」の実践や指導法や解剖学が中心 になる。

•「アーサナを教える=ヨーガを教える」 と考えてしまう。

○解剖学の影響

•近年のヨーガ指導において、解剖学の知識が重視される傾向がある。

•解剖学は、ケガの予防や正しい体の使い方を学ぶために重要だが、「解剖学を理解することがヨーガの本質」と誤解する場合もある。

•「筋肉や骨の動きを学ぶこと=ヨーガの理解」と錯覚し、本来のヨーガの教えを学び実践することが指導者においても失われる。

 

 

4. 「運動好きな人」にヨーガが広まった

ヨーガに興味を持つ人の多くが、もともとフィットネスやエクササイズに関心がある人たちだったことも、混同の原因です。

•ヨーガがジムやフィットネスクラブで提供されるようになり、「ヨーガ=体を動かすもの」というイメージが定着した。

•もともとトレーニングや運動が好きな人がヨーガを始めると、「瞑想や教え」よりも「身体的な効果」に興味を持つ傾向が強い。

•その結果、「より動きのあるヨーガ」「強度の高いヨーガ」が人気になり、フィットネス化が進む。

 

 

5. 瞑想・哲学を伝えることの難しさ

本来のヨーガには、瞑想や聖典を基にした教えがあります。

しかし、

・瞑想は「目に見える効果」がすぐに感じにくく、正解がわからない。

・聖典の教えは難しく、現代社会と結びつかないと思っている。

そのため、指導者が「ヨーガの教えや瞑想」を教えるよりも、「アーサナ中心のレッスン」を行う方が、わかりやすく、人気が出やすい。

 

 

ヨーガの本質を取り戻すために

○ヨーガを学ぶ際に、アーサナ・日々の規律・聖典の教え・瞑想・呼吸法を統合して学ぶことが大切。

○指導者が、アーサナだけでなく、精神的な成長・心身と自己の本質の統合を教える意識を持つ。

 

 

ヨーガをフィットネスと誤解すると起こる弊害

a. ヨーガの本来の目的を見失う

・本来のヨーガの目的は、心の制御(チッタ・ヴリッティ・ニローダハ)や自己の探求(アートマ・ジニャーナ)であり、単なる身体の動きではない。

・解剖学やフィットネス的な探求に偏ると、「心の平安」や「自己探求」というヨーガの本質が抜け落ちる。

 

b. 身体に執着し、精神的な成長が停滞する

・「より高度なアーサナができること=成長」と誤解し、エゴを強めてしまう可能性がある。

・その結果、「体が柔らかい人がすごい」「解剖学に詳しい人が優れている」という間違った価値観に囚われる。

 

c. ヨーガの哲学や瞑想の実践を軽視する

・本来のヨーガには 「ヤマ・ニヤマ(道徳)、プラーナーヤーマ(呼吸法)、デャーナ(瞑想)」 などが含まれる。

・フィットネス的な視点でヨーガを見てしまうと、「聖典の教えや瞑想は必要ない」と考え、表面的なヨーガになってしまう。

・その結果、身体は鍛えられても、心は乱れたままになる。

 

d. ストレスや不安を解決できない

・ヨーガは本来、心を整え、人生を豊かにするための道であるが、身体に偏ると、「身体は健康でも、心は満たされない」という状態に陥る。

 

e. ヨーガが「自己探求の道」ではなく「外見を磨くもの」になってしまう

・本来のヨーガは、「自己の本質(アートマン)を知ること」 を目的としている。

・しかし、フィットネスの視点だけで見ると、「ヨーガは痩せるためのもの」「見た目を良くするためのもの」と勘違いしてしまう。

・アーサナの探求が、ヨーガを深めていると誤解される。

・外側に意識が向いてしまう結果、SNSのフォロワーの数やいいねの数で指導者を評価したり、大きなイベントに出ることや、アンバサダー、インフルエンサーになることが目的になってしまう。

 

次回以降のブログでさらにヨーガの歴史や、なぜ内面の探求のはずが外側の評価にとらわれてしまうのか、などを書きたいと思います。

 

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